2015年11月4日水曜日

プロヴァンスの紅葉

隣接するアルプ・ド・オート・プロヴァンス県のモンブラン(Montblanc)村の教会の紅葉
プロヴァンス(特にニースのあるアルプ・マリティム県)の紅葉については以前にも紹介した。ルー川(le Loup)沿いのルー渓谷やクルム村はニースに近いので手軽に行ける。今回はさらに北上して、ヴェスビー川(la Vésubie)沿いのサン・マルタン・ヴェスビー(Saint Martin Vésubie)、ヴナンソン(Venanson)、ティネ川(la Tinée)沿いのヴァルドブロール(Valdeblore)そしてヴァール川(le Var)沿いで隣県のアルプ・ド・オート・プロヴァンス県(Alpes de Haute Provence)のアントルヴォー(Entrevaux)周辺の紅葉を紹介する。
アルプ・マリティム県の主要河川
メルカントゥール国立公園の玄関口のサン・マルタン・ヴェスビー(中心部の標高は928m)は高山ハイキングシーズンの夏にはしばしば通るのでよく知っていると思っていたのだが、不思議と秋に行った記憶がなかった。(有り得ないことだが)実際にこの時期に行ったことがなかったのか、行ったが紅葉が記憶に残るほど綺麗ではなかったのか分からない。ここでは隣村のヴナンソン(Venanson)に登ることを特にお勧めする。車で10分程で行ける。ヴナンソンは人口約150人の小さな村で、ちょうどエズ(Eze)のように岩山の上に立っているのでサン・マルタン・ヴェスビーとその周辺の山々が非常によく見渡せる。ヴナンソンの南側には「納屋(les Granges)」と呼ばれる谷があり、ここの紅葉は素晴らしい。村に車を駐車して谷を散策することを強くお勧めする。
ヴナンソンの「納屋」谷の紅葉
サン・マルタン・ヴェスビーから県道D2565をヴァルドブロールに向かって進むと、ラ・ボリン(la Bolline)と呼ばれる村の外れの集落を過ぎた辺りから紅葉が増してくる。道路はくねくねと曲がりながら小さな谷(le vallon de Bramafam)をティネ川へ下って行くのだが、この辺りは桜の木や栗の木が多く生えていて赤と黄色が美しい。途中で出くわしたハイカーの話では春には桜のピンクの花で谷全体が染まるそうである。日本ならばこのように紅葉が綺麗な場所はよく知られていて、多くの人が訪れるのだが、紅葉狩りの習慣がないフランスでは情報からして殆どなく、他のハイカーや知り合いの口伝えに頼るしかない。
ラ・ボリン(la Bolline)の森
私にとって今年の秋の最大の収穫はヴァール川の紅葉の美しさを再発見したことだ。ヴァール川はニースに注いでいて、地元の人間にとっては見慣れた川なので、私の頭の中では山間の紅葉とは強く結びついてはいなかったのだろうと思う。今回、妻がアントルヴォーへ行こうと提案した時には、どうしてあんな所まで行きたいのかよく分からなかった。確かにアントルヴォーのプラタナスの並木道は綺麗だが、「紅葉狩り?」
アントルヴォーは中世の城で有名でこの地方の観光名所のひとつであるが、村自体はそれほど綺麗だとは思わない。アントルヴォーからは狭い県道D610に入ることをお勧めする。国道N202までの数キロの短い道程なのだが、山あり谷ありと地形が変化に富んでいて飽きることがない。何より山肌の紅葉が非常に美しい。一枚目の写真はこの道のちょうど中間地点にあるモンブラン(Montblanc)村の教会のものである。県道はルエン(Rouaine)村で国道に合流する。ここも景色が美しい。国道からは魅惑的なハイキングトレイルがいくつか見えた。いつかここに戻って来たいと思った。
アントラヴォーの風光明媚な県道(赤)
アルプ・ド・オート・プロヴァンス県は私の好きな県のひとつである。雄大なヴェルドン渓谷、ラヴェンダー畑で有名なヴァレンソル、ボネット峠、バルセロネットなど、景色が美しく、ハイキングを楽しめる場所が数多くある。ニースからだとやや遠いので泊りがけでないとなかなか出かけられないのだが、秋の紅葉はきっと素晴らしいに違いない。是非、機会をつくって数日間この地方を巡ってみたいと思う。
紅葉はその年の気候に左右されて、時期がずれたり、色合いが良くなかったり、短期間で終わったする。平年的には十月の中旬に始まり、二、三週間続く。今年は不順な天候にも拘わらずに平年並みのようである。メルカントゥール国立公園ではすでに何度か雪が降った。カラマツの針葉も散り始めている。冬が次第に近づいている。
ルエン村と周辺の山々

2015年8月5日水曜日

ジアロルグ峠-メルカントゥール国立公園

峠付近から見下ろすジアロルグ谷
ジアロルグ峠(le col de Gialorgues 2519m)は県北部に位置し、ニースからだと最寄の村(サン・ダルマス・ル・セルバージ Saint-Dalmas-le-Selvage 人口125人)まで100キロ以上もあるので日帰りのハイキングにはややきつい。一泊二日で他のハイキングとセットで週末なりを過ごすのが最良だと思う。とにかくここは遠い。
ハイキングトレイルの入り口はサン・ダルマス・ル・セルバージ村からさらに6キロ先にある。道路はかなりの悪路で、結局、入り口の手前数百メートルで進めなくなり車を止めて歩くことになった。ガイドブックには道路状態まで詳しくは書かれていなかった。下の地図からお分かりのように、トレイルはジアロルグ谷を直線的に登る。標高差600メートル、往復4時間となっているが、
実際には5時間ほどかかった。最初はカラマツ林の中を歩く。4,50分で草に覆われた谷に出ると、そこから峠までは緩やかな登りになる。直線的に登るので余りドラマチックな景色の展開はないのだが、そこここに小さな発見がある。ジアロルグ谷にはあちこちに大小の川が流れていて水が豊富なのがわかる。この日は丸々と太ったマルモットを二匹見た。谷のほぼ真ん中に二軒の小さな山小屋がある。まったく人里離れた山奥にポツンと立っているので興味をそそられる。一軒は閉まっていたが、もう一軒は誰かが泊まっているらしく、洗濯物が軒先に干してあった。最初は途中で出会った羊飼いの家だろうと思ったが、そうではなさそうだ。さらに先に進むと湖が二つある。さほど綺麗ではない。湖を通り過ぎ、最後の登りの後に峠に到着。
ジアロルグ谷への入り口
ジアロルグの山小屋
ジアロルグ峠
峠は強く、冷たい風が反対側から吹き上げていたので私達はリュックからジャケットを取り出して羽織った。反対側にも同じような谷が広がっていた。こちら側の山々はより荒々しい感じがした。ここで私達は反対側にあるエストンク(Estenc)村から登ってきた友人グループと合流した。このルートは我々がとったルートより標高差が200メートルほど高い。私達は近くのレストロップ湖(lac de l'Estrop)まで行き、そこで一緒に昼食をとった。2時間程ここで食べたり談笑したりした後、私達は友人達と別れてジアロルグ谷を下った。薄黒い雲が次第に空を覆い始めた。嵐に見舞われるのではないかと危惧したが、天気は最後までもってくれた。
レストロップ湖からの眺め(ジアロルグ峠の下の建物は戦争中使われた要塞の跡)
妻はこのハイキングがとても気に入ったようだったが、私は何か物足りなさを感じた。多分、景色に余り変化がなかったからかも知れない。美しいことには違いないのだが、ずっと同じ場所を回っているような気がした。谷を取り囲む山の登山について少し調べてみようと思う。

2015年8月4日火曜日

オート・ザルプ県デボルイ村

オート・ザルプ(Hautes Alpes)県デボルイ(Dévoluy)村は南アルプスの山々に四方を囲まれた人口900人程の小さな農村で、よく整備された小規模のスキー場が二つある。山が自然の障壁となり、長い間孤立状態が続き、農民の生活は非常に貧しいものであったらしい。ヴィクトール・ユーゴのレ・ミゼラブルの中にこんな一節がある 「デボルイの山人を見るがいい。荒れ果てた土地に住み、鶯の鳴き声など50年に一度しか聞くことがない。」しかし、現在のデボルイは青々とした牧草が広大な谷間に広がり、アルプ・マリティム県の幾重にも入り組んだ山間の山村と比べると遥かに豊かに見えた。
ジコン山の斜面から見るデボルイ
デボルイ周辺でのハイキングをここで二つ、ジコン山(Le Gicon 2086m)登山とロバ谷(Vallon d'Âne)周回の様子を短く紹介したい。どちらも比較的易しく(往復5時間、標高差5、600メートル程度)で景色は素晴らしい。デボルイと言えばピック・ド・ビュウール(Pic de Bure 2709m)がよく知られているが、この山の登山は往復8時間、標高差1400メートルもあり、我々の滞在中は日中の気温が30度を超えていたこともあり、今回は断念した。
デボルイから見るジコン山
ジコン山山頂からの眺め
一つ目はジコン山の登山である。ジコン山はデボルイの何処からもよく見え、非常に面白い形をしているのですぐ興味を惹かれた。地元の観光案内所で手に入れたハイキングガイドは殆ど役に立たなかったのでネットで色々調べて準備したのだが、この情報も曖昧で分かりずらく、二、三度道に迷ってしまった。この山の後ろは切り立った崖になっていて、その崖沿いにトレイルがあるので眺めは抜群である。山頂付近は草が腰の高さまで伸びていた。また、セイヨウイラクサ、アザミもあちこちに生えていたので注意しながら歩いた。この日はハエやアブが大量に出ていて苦労したが、虫除けスプレーを持参していたので助かった。夏山のハイキングには虫除けスプレーは必携である。
カラマツ林を抜けて草地に出る。遠くにジコン山も見える。
小さいケルンがあるだけの山頂で昼食をとったが、ひんやりとした北風が気持ちよかった。鷲が数羽、上昇気流に乗ってすぐ近くまで飛んで来た。大きく広げた羽に当たる風音が聞こえるかと思えるほどの近さだった。遠くにエクラン国立公園(Parc National des Ecrins)の山々が見渡せた。この公園には比較的簡単にアクセスできる小さい氷河(Glacier Blanc)があるのだが、今回は時間の都合で行けなかった。
ロバ谷の緩やかな登り
二つ目はロバ谷のハイキングで、これは皆さんに是非お勧めしたい。素晴らしい景観、歩きやすくて分かりやすいトレイルと文句のつけようがない。出発地点は「丸い森(Le bois rond)」と呼ばれるカラマツ林で、同じ場所からピック・ド・ビュウールへ向かう道も伸びている。小1時間林の中を歩くと草地に出る。ここからロバ谷を緩やかに登って行く。途中、羊飼いの犬に出会って吠え立てられた。遠くを羊の群れがゆっくりと移動していた。トレイルはピック・ド・ビュウールの脇を通る。随分と近くに見えるので往復8時間という所要時間が信じられない。しかし、山は絶壁に囲まれているのでここからだとアクセス道が無いようだ。多分、大きく遠回りして別の方向から登らなければならないのだろう。
ロバ谷を登りつめると左に折れて小さい山の稜線(ロバの稜線  La Crête d'Âne)まで行く。そこがこのハイキングの最高地点で、標高が2019メートルとなっている。稜線の反対側に別の谷があり、今度はこの谷を下って駐車場に戻ることになる。この稜線からの眺めは非常に美しい。ここで昼食をとっていると、男女三人組みのハイカーが登ってきた。その日初めて会うハイカーである。女性のハイカーは殆ど水着姿である。暑いとは言え、虫刺されや不慮の転落などを考えるとちょっと無謀だと思った。
ロバの稜線(La Crête d'Âne)からの眺め。左の谷を登って来た。今度は右の谷を下ることになる。
右側の谷を少し下ると、ロバの稜線に奇岩が聳えているのが見えた。不思議と感動的な光景だった。この奇岩の写真はネットでも見たことがあったのですぐにそれだと分かった。朝か夕方の透明な光りがあれば最高なのだがそうもいかない。半時間ほどここにいてこの異様な光景を楽しんだ。
ロバの稜線の奇岩
残りの下りは景色もさほどではなかった。最後に1時間ほど林道を歩いた。あとで妻と話したのだが、下りは別のルートをとってロバ谷に引き返した方が良いと思われる。ともかく、非常に満足できた一日だった。

2015年7月8日水曜日

サーニュ湖-メルカントゥール国立公園

ここ二週間余りフランス全土は猛暑で、連日摂氏30度を超える日々が続いている。観光客(ロシア人、中国人が特に多い)で溢れるニースは光化学スモッグ警報が出っ放しの状態で空気が非常に悪く、海の水も汚れている。いつも思うのだが、何故、真夏のニースにこれほどの人間がやって来るのか私には全く理解できない。
とにかく大気汚染からだけでも逃れようと、先日、ニースから1時間半程のボレオン(le Boréon)へ行ってきた。ボレオンと言えばアルファ(Alfa :Le Parc des Loups du Mercantour)と呼ばれる野生狼の保護施設で有名だが、ハイカーにとってはメルカントゥール国立公園の入り口のひとつとしてよく知られている。ここからトレコルパス湖(lac de Trécolpas)へ登るルートは特に人気がある。私達はハイカーで混んでいるであろうこの湖には行かずに、クーグルド山小屋(le refuge de la Cougourde)の少し先にある、やや小ぶりなサーニュ湖(lac des Sagnes)を目指した。
横の地図の青色がトレイルで、休憩を含めて往復5時間半程度かかった。この日は気温が恐らく30度近くまで上がっていたと思われ、私達は非常にゆっくりとしたペースで歩いた。駐車場が標高1670mなので、サーニュ湖まで520m上ることになる。トレイルはよく整備されており、非常に歩きやすかった。
駐車場から薄暗い松林を抜け、1時間ほど登るとカラマツが次第に目に付くようになる。小川があちこち流れていて、木橋を何度となく渡る。途中、多くのハイカーと出会ったが、その大多数は分岐地点425を右に折れてトレコルパス湖の方へ向かって行った。予想した通りだった。


山小屋までは緩やかな登りが絶えなく続く。連日の睡眠不足に加えて気温が高いのでやや疲れる。駐車場から二時間半ほどで山小屋に到着。休憩は取らずに、建物の脇を通りサーニュ湖までさらに進む。

山小屋の裏手を歩いてサーニュ湖へ向かう。ここから三十分程歩く。高気温にもかかわらずにまだ残雪が見られた。
サーニュ湖
サーニュ湖は想像以上に小振りだった。小川が湖に幾重にも流れ込んでおり、その水は氷のように冷たい。一ヶ月前はこの辺り一面は春の花で溢れていたに違いない。モルモットの鳴き声が聞こえたがいくら探しても姿が見えなかった。湖畔で昼食をとった後は山小屋まで下りてコーヒーを飲んだ。この日の夜は30人の宿泊客があると管理人が言っていた。

クーグルド山小屋
サーニュ湖はさほど綺麗ではなくやや失望したが、青々とした夏草の生えるトレイルを歩くのは気持ちが良かった。無数の小川や滝の水音を聞いていると暑さを忘れた。全般的に満足できる一日だった。


2014年10月29日水曜日

深淵の岩(Roche de l'Abysse)

深淵の岩から東を望むとトンド峠を越えてフランス側に流れ落ちる雲海とジオーレ要塞が見えた
深淵の岩(Roche de l'Abysse 標高2755m)はイタリアとフランスの国境に位置し、トンド峠(Col de Tende 標高1870m)を見下ろすように聳えている。先日、この山に登ってきたのでその時の様子を少し書いてみる。山頂からの景観が非常に素晴らしく、是非、皆さんにもお勧めしたい。
ハイキングルート
県発行のガイドブックはトンド峠から登るルートを載せていて、これがどうやら正規のルートのようであるが、この日の峠は悪天候で視界も殆どゼロだったので、我々はカステリーノ(Casterino)側から登った。このルートは余り知られていないようである。全行程は休憩を入れて6時間位だった。難易度は中級程度だろうか。だが初心者でも充分歩ける。トレイルは標識がよく施されていて迷うようなことはない。
出発点は、偶然出くわした地元の猟師に教えてもらったペイルフィック峠(Baisse de Peïrefique)に近い林道の脇で(標高1974m)、そこまでは車で行った。
半時間ほど丘を上った後、カラマーニュ谷(Vallon de Caramagne)の谷底に下る。目の前に深淵の岩の頂上がすでに見えてくる。谷底からは谷の向かい側の斜面を再び緩やかに登って行く。トレイルはジオーレ要塞(Fort de Giaure)まで延びていて、そこから折り返すように山尾根伝いに深淵の岩まで行くのだが、我々は要塞の手前で緩やかな草地の斜面を直接上ってやや距離を稼いだ。最後の200メートルほどは岩場の登りで、幸いにも気温がやや高かく、風も強くなかったのできつくはなかった。
山頂からイタリア側(北)を望むと遠くにヴィゾ山も見えた
頂上には無人の測候所と国境を示していると思われる十字架が立っていた。登山愛好家のものだろうか、見知らぬイタリア人の遺影もそこここに飾られていて、さながら簡易墓地状態である。頂上からは西に驚異の谷(Vallée des Merveilles)、北にイタリアの名山ヴィゾ山(Monte Viso 標高3841m)さらには雪に覆われたスイスアルプス、東にトンド峠、南にフランスの山々が望まれた。天気が良ければ地中海まで見えそうである。この日は残念ながら、イタリア側は雲海に覆われていて高山の山頂以外は何も見ることができなかったが、正に息を呑むようなパノラマだった。

2014年10月25日土曜日

カステリーノのカラマツ- メルカントゥール国立公園

カラマツを映す緑湖(Lac Vert)
メルカントゥール国立公園に隣接するカステリーノ(Casterino)はニースから車で2時間弱のところにある小さいスキーリゾートだが、原始時代の彫刻画で有名な驚異の谷(Vallée des Merveilles)に近いこともあり、オフシーズンには(特に週末)多くのハイカーが訪れる。カステリーノ周辺にはカラマツが多く生えおり、秋の紅葉シーズンには山々が黄色に染まりとても美しい。上の写真は先日のハイキングの際に撮ったもので、カステリーノの駐車場から歩いて2時間程の所にある緑湖(Lac Vert)のものである。この日は非常に天気が良く、終日、雲ひとつない青空が望めた。現在、南仏では暖かい日が続いていて、日中は汗ばむほどだ。

2014年8月15日金曜日

ヴァンス湖(Lacs de Vens)-メルカントゥール国立公園

ヴァンス湖の中で最大の湖
サン=テティエン=ド=ティネ(Saint-Étienne-de-Tinée)の近くにメルカントゥール国立公園(Parc national du Mercantour)の中でもその美観でよく知られたヴァンス湖(Lacs de Vens)がある。先日、友人達とそこへ行ってきたので、その時のハイキングについて少し書いてみる。「ヴァンス湖」とは五つある湖の総称で個々の湖には名前がない。
ニースからの道のり
ニースからだと車を飛ばせば1時間半ほどでサン=テティエン=ド=ティネの村に着く。そこからボネット峠(Col de Bonette)へ行く狭い田舎道に入り、さらに8キロ走ったところに今回のハイキングの出発点である駐車場(標高1533m)に着く。国立公園の看板が立っているので見つけやすいと思う。ティネ川の畔に設けられた10台ほどの小さな駐車場である。
駐車場から最初はなだらかな林道を登り始める。林道は道路の反対側にある。林道を100mほど登った所にもうひとつの駐車場があり、もし下の駐車場が一杯の時はここに駐車すればよい。
ハイキングルート
登りは長く、ややきつい。ヴァンス山小屋(Refuge de Vens)は標高2380mのところにあり、この850mの標高差を一気に登る。下りが殆ど無い。後で、オティエ湖のハイキングによく似ていると思った。途中、何度か川を渡ったり、滝を眺めたりするのだが、結局、同じ狭い谷を垂直に登ってゆくだけなので景色の変化が乏しい。この点、オティエ湖のルートは歩いていて楽しい。
最初の湖-残雪が見える
2時間程費やして最初の湖に到着する。ここからは殆ど平坦なので歩きやすい。我々はさらにヴァンス湖の中で最大の湖(最初の写真)まで行き、その湖畔で昼食をとった。
この湖の上に山小屋が立っている。山小屋を挟むように二つの滝が落ちていて、遠くからの眺めはなかなかきれいである。滝を除けばニース山小屋の雰囲気だ。友人達を湖畔に残して、私が訪れた時には10人ほどのイタリア人のハイカーのグループで賑わっていた。
二時間近く湖畔で休んだ後、同じルートを引き返して駐車場まで戻った。
典型的なメルカントゥールの景色だった。湖、青々とした草、モルモットの泣き声、川、滝、岩山と全部そろっている。ただ、何か物足らなさを感じた。後で妻と話し合ったのだが、多分、湖に着くまでの景色が少し単調だったせいかも知れない。なんと贅沢な不満ではないだろうか。アクセスがやや難しいのでそれほど多くのハイカーとは出くわさなかった。みんな、公園の他の名所にいってしまったのだろうか。
滝に挟まれたヴァンス山小屋とその周辺-パノラマ合成写真
後日談
家内があるハイキング愛好家と話をしたところ、彼にはヴァンス湖からの帰り道がかなり退屈だったそうだ。今から思い返してみると、湖自体も格別美しかったとも思われない。平均的な美しさとでも言えようか。もっとドラマチックで綺麗な場所は他にもあるので、ここはさほど強くはお勧めしない。

2014年5月3日土曜日

サンタニエス(Sainte-Agnès)から熊山(Mont Ours)へ

サンタニエス村
ニース近郊には絵になるフォトジェニックな「美村」が三つある。エズ(Eze)、ペイヨン(Peillon)とサンタニエス(Sainte-Agnès)である。良い光りに恵まれれば誰でも傑作が撮れると思えるほどである。
サンタニエス村(Sainte-Agnès)はモントン(Menton)から数キロ山に入った所にある。村自体はそれほど面白くはないのだが、村の背後の小高い丘からのモントン市街そして地中海の眺めが素晴らしい。
サンタニエス村周辺にはハイキングトレイルが縦横に走っていて、休日にはハイカーが多く訪れる。今回は村の近くの熊山(Mont Ours)と呼ばれる標高1239m の山に登ってみた。地図を御覧頂けると分かるように、サンタニエス村から少し山に入った峠(Col des Banquettes)の駐車場から熊山に登り、帰りは別の山(Pointe Siricocca)を迂回して戻るルートである。休憩時間を含めて、全行程の所要時間は5時間弱だった。
熊山までは標高差の500m を一気に登るが傾斜がなだらかのでそれほどきつくはない。高度を上げるにしたがい地中海が次第に大きく視界に入ってくる。このような山と海の景色はこの地方独特のものである。熊山の頂上には古い城壁に囲まれた測候所の建物がある。(城自体は残っていない。)視界は360度開けていて、北側にはまだ雪に覆われた南アルプスの山々がよく見えた。サルビヤの一種だろうか、紫色の花がびっしりと咲いていた。
高度を上げると地中海が見えてくる。
熊山からは下り道になる。途中、Pic de Garuche と呼ばれる小山に立ち寄って、第二次世界大戦時代に建てられた要塞を見た。サンタニエス村は映画でも有名なマジノ戦線の南端に位置していて、イタリア軍の攻撃からモントンを守るために建設された巨大な要塞がまだ残っている。村の周辺の山にも小型の要塞があちこちに見られる。
Pointe Siricocca の全景
Col de Verroux が左下に見える
要塞からさらに下ると峠(Col de Verroux)に着く。この日はオリエンテーリングが行われていて、峠にはテーブルが設けられており、次々にやって来るハイカー達が差し出す紙に初老の男性がスタンプを押していた。私たちは峠から下って Pointe Siricocca の裏側を回って駐車場まで歩いたのだが、オプションとしてこの山に登るのも面白いだろう。Pointe Siricocca は海側が切り立った崖なので頂上からの眺めは圧巻である。駐車場までの帰り道はかなり長く感じられた。景色は標高が低いためかそれほどでもなかった。
中央やや上、山の斜面にあるのがサンタニエス村
サンタニエス村へはぺーユ(Peille)経由で車で行くのが景色もきれいでお勧めである。ニースからだと40分程かかる。モントン経由だと短時間で着くが殺風景だ。
サンタニエス村の隣にはゴルビオ(Gorbio)と呼ばれる別の村があり、この二つの村を巡る周回ルートは景色が素晴らしく非常に人気がある。初めてこの地方に足を入れる方には是非お勧めしたい。




2014年1月2日木曜日

サント・ヴィクトワール山

サント・ヴィクトワール山
去年(2013年)の大晦日にセザンヌの絵画でよく知られたサント・ヴィクトワール(Sainte Victoire)山に登ってきた。登山口は数多くあるのだが、今回はビモンダム(Barrage du Bimont)から「小修道院」(Le Prieuré)と呼ばれる山小屋まで登った。ニースからだとエクサンプロヴァンス経由で2時間弱でビモンダムに着く。
サント・ヴィクトワール山は馬の背のように長く伸びる、全長18キロの岩山で、最高点が1011mと高くはない。2000m級の南アルプスの山に登り慣れている私には少し物足りない。登りはなだらかで、2時間ほどかけて600m上がると山小屋に着く。マーカー(青の横線)が見つけづらい場所が何ヶ所かあったが、濃霧の中を歩くのでないかぎり迷うことはまずないだろう。よく知られた山なので大晦日にもかかわらず多くのハイカーに出くわした。春・夏の観光シーズンには人で溢れかえるに違いない。

2013年11月2日土曜日

クルムの紅葉

クルムの滝
昨日、紅葉狩りにクルム(Courmes)へ行ってきた。今年は天候が不順なためか紅葉は始まったばかりで、クルムの森はまだ青々としていた。二、三週間後に再び出かけてみようと思う。

2013年10月7日月曜日

ペヨン

このところ週末は天気が悪く、外へ出る機会がなかなかない。昨日の日曜日も雲が多く、時々雨の一日という天気予報だったのだが、短時間の山歩きなら大丈夫だろうと思い、近くのペヨン(Peillon)村まで行き、2時間程山の空気を吸ってきた。ペヨンはニースから20分と近く、景色も美しいのでよく出かける。
この辺りではすでに秋の紅葉が始まったようで、所々でナナカマドやスモークツリーのきれいに色づいた葉を見た。本格的な紅葉はまだ一ヶ月ほど先だろう。
今は狩猟シーズンの盛りなので、あちこちから猟銃の発砲音がした。ハイキングトレイルから数百メートルしか離れていない所でイノシシ猟をしているので、ちょっと危険だ。途中、猟師が撃ち落したイノシシを崖から引き上げているのを見た。その近くではロッククライミングをしているカップルがいる。
ハイキングを終えて村に戻ると、殺されたばかりの若いイノシシの血にまみれた死骸が噴水のそばに静かに横たわっていた。

2013年8月29日木曜日

ニース山小屋(Refuge de Nice)

前々回のオティエ湖の記事の中でニース山小屋(Refuge de Nice)に通ずるハイキングトレイルのことに少し触れた。実はその一週間後、ベルべェデールに再び戻り、ニース山小屋そしてその先のニレ湖(Lac Niré)まで歩いたので、その時の様子を書いてみる。左の地図を御覧頂ければお分かりのように、分岐点からオティエ湖へ向かわずに、ゴルドラスク谷に沿って(オレンジ色の道)ニース山小屋まで行く。1時間半の行程とやや長いが、なだらかな登りなので初心者でも楽に歩ける。

分岐点から「エストレック滝」(Cascade de l'Estrech)そして昔の関所跡だろうか、「イタリア人の壁」(Mur des Italiens)と呼ばれる石壁を通り過ぎながら高度を上げて行く。イタリア人の壁を過ぎたあたりから、次第にむき出しの岩石が目立ち始める。しかしまだ標高が低いので植物も青々と茂っている。小川がそこここに流れていて、典型的なメルカントゥールの風景である。途中、牧草地のような広く平坦な場所を歩くが、非常に気持ちが良い。

ニース山小屋(標高2232m)は「フウ湖」(Lac de la Fous)を見下ろすように岩の上に立っている。かなりしっかりと造られた建物で一度に80人収容できるらしい。その横には冬用のやや小さい山小屋も立っている。フウ湖には水量調整用のコンクリートの堰が設けられている。どこか人口湖のような感じがして余り面白くない。山小屋で昼食をとろうと考えていたのだが、すでに他のハイカーの一団にベンチを占領されてしまっていたので、さらにニレ湖まで進むことにした。

ニース山小屋とフウ湖

ニレ湖はさらに100m程登った所にある。この辺りには滝や小川が無数に流れている。小川を二度、三度と渡り先へ進む。すでに駐車場を出発してから600m以上登り、二時間半ぐらい歩き続けているので疲れてきた。最後の登りはややきつかった。

ニレ湖(標高2353m)はオティエ湖に比べればやや見劣りするが、それでも美しい。氷か雪の塊が湖の中央に浮かんでいた。鉱物質の風景である。ここで昼食をとった後、さらに奥へと行ってみると、小さい湖がまだある。

ニレ湖

名前の無いこれらの湖の岸の一部は平らな草地になっていて、フランス人ハイカーのグループがテントを立て、それぞれ本を読んだり、昼寝したりしていた。非常に気持ちの良い場所だ。こんな所で一晩過ごしてみたいと思った。

ニレ湖の先にある無名湖のひとつ

道はさらに続き、上の写真の背景にある山を越えて驚異の谷へと行く。実際、このトレイルはGR52と呼ばれるアルプス縦走トレイルの一部である。さらに補足すると、このGR52はさらに大きい、オランダの北海沿岸から始まり、地中海のニースまで延びる全長2600キロのGR5と呼ばれるトレイルの地方名である。だが、我々のハイキングはこの無名湖までで、しばらく辺りの風景を堪能した後、同じ道を引き返した。

景色がきれいで変化に富んでいて、非常に満足できるハイキングだった。ニレ湖で止まらずに、その奥へさらに進むとことをお勧めする。