2009年7月31日金曜日

ルール、シアン渓谷

ルール村
アルプ=マリティム県は東京都の2倍の面積しかないにもかかわらず、海もあれば3000メートル級の高山もあり、自然景観、動植物の生態系は実に変化に富んでいる。ハイキングに出ると凄まじく褶曲した地層や断層をよく目にする。過去の激しい地殻変動が日本では見られない地形を造ったのではないかと思う。
ニースから車を北に一時間ほど走らせると中部山岳地帯に入る。そこはどちらを向いても山が延々と連なっていて、鳥の鳴き声や風の音しか聞こえないような全くの別世界である。東京から車で直接、丹沢の塔ノ岳に乗りつけるような感じだ。先日、この中部山岳地帯と高山地帯の境目辺りに位置するルール (Roure、海抜1089メートル) という村の近くの自然樹木園へ行ってきた。樹木園は期待に反してやや貧弱だったが、我々は自然の中で十分リラックスすることができた。大学生のアルバイトと思われる若い男女が5、6人、そこで働いていて、見学者の案内をしていた。寝泊まりしながらここで夏を過ごしているのだろう。彼らの説明では谷づたいに地中海から暖かい空気が上って来て、マイクロ気象現象を引き起こすため、真冬でも摂氏マイナス5度以下に冷えこむことはなく、地中海性と高山性の双方の木々が共存しているそうだ。
シアン渓谷
ルールからはベーユ (Beuil、海抜1442メートル) まで行き、そこから南に折れてシアン渓谷を下った。20年以上も前にここを通ったことがあり、当時のことが色々と思い出されて複雑な気持ちだった。シアン渓谷は浅く、ルー渓谷やヴェルドン渓谷 (ヴァール県) のような壮大さは全くないが、洞窟のようにくり抜かれた地形が特徴だ。自動車道路が谷底を走っており、自然破壊と言えなくもないが、多分、生活道路として長年使われていたのを整備したのだろう。錆色をした岩肌が面白く、一風変わった風景だ。渓谷を抜けると、ニースまで高速道路で一時間とかからない。