2014年10月29日水曜日

深淵の岩(Roche de l'Abysse)

深淵の岩から東を望むとトンド峠を越えてフランス側に流れ落ちる雲海とジオーレ要塞が見えた
深淵の岩(Roche de l'Abysse 標高2755m)はイタリアとフランスの国境に位置し、トンド峠(Col de Tende 標高1870m)を見下ろすように聳えている。先日、この山に登ってきたのでその時の様子を少し書いてみる。山頂からの景観が非常に素晴らしく、是非、皆さんにもお勧めしたい。
ハイキングルート
県発行のガイドブックはトンド峠から登るルートを載せていて、これがどうやら正規のルートのようであるが、この日の峠は悪天候で視界も殆どゼロだったので、我々はカステリーノ(Casterino)側から登った。このルートは余り知られていないようである。全行程は休憩を入れて6時間位だった。難易度は中級程度だろうか。だが初心者でも充分歩ける。トレイルは標識がよく施されていて迷うようなことはない。
出発点は、偶然出くわした地元の猟師に教えてもらったペイルフィック峠(Baisse de Peïrefique)に近い林道の脇で(標高1974m)、そこまでは車で行った。
半時間ほど丘を上った後、カラマーニュ谷(Vallon de Caramagne)の谷底に下る。目の前に深淵の岩の頂上がすでに見えてくる。谷底からは谷の向かい側の斜面を再び緩やかに登って行く。トレイルはジオーレ要塞(Fort de Giaure)まで延びていて、そこから折り返すように山尾根伝いに深淵の岩まで行くのだが、我々は要塞の手前で緩やかな草地の斜面を直接上ってやや距離を稼いだ。最後の200メートルほどは岩場の登りで、幸いにも気温がやや高かく、風も強くなかったのできつくはなかった。
山頂からイタリア側(北)を望むと遠くにヴィゾ山も見えた
頂上には無人の測候所と国境を示していると思われる十字架が立っていた。登山愛好家のものだろうか、見知らぬイタリア人の遺影もそこここに飾られていて、さながら簡易墓地状態である。頂上からは西に驚異の谷(Vallée des Merveilles)、北にイタリアの名山ヴィゾ山(Monte Viso 標高3841m)さらには雪に覆われたスイスアルプス、東にトンド峠、南にフランスの山々が望まれた。天気が良ければ地中海まで見えそうである。この日は残念ながら、イタリア側は雲海に覆われていて高山の山頂以外は何も見ることができなかったが、正に息を呑むようなパノラマだった。

2014年10月25日土曜日

カステリーノのカラマツ- メルカントゥール国立公園

カラマツを映す緑湖(Lac Vert)
メルカントゥール国立公園に隣接するカステリーノ(Casterino)はニースから車で2時間弱のところにある小さいスキーリゾートだが、原始時代の彫刻画で有名な驚異の谷(Vallée des Merveilles)に近いこともあり、オフシーズンには(特に週末)多くのハイカーが訪れる。カステリーノ周辺にはカラマツが多く生えおり、秋の紅葉シーズンには山々が黄色に染まりとても美しい。上の写真は先日のハイキングの際に撮ったもので、カステリーノの駐車場から歩いて2時間程の所にある緑湖(Lac Vert)のものである。この日は非常に天気が良く、終日、雲ひとつない青空が望めた。現在、南仏では暖かい日が続いていて、日中は汗ばむほどだ。

2014年8月15日金曜日

ヴァンス湖(Lacs de Vens)-メルカントゥール国立公園

ヴァンス湖の中で最大の湖
サン=テティエン=ド=ティネ(Saint-Étienne-de-Tinée)の近くにメルカントゥール国立公園(Parc national du Mercantour)の中でもその美観でよく知られたヴァンス湖(Lacs de Vens)がある。先日、友人達とそこへ行ってきたので、その時のハイキングについて少し書いてみる。「ヴァンス湖」とは五つある湖の総称で個々の湖には名前がない。
ニースからの道のり
ニースからだと車を飛ばせば1時間半ほどでサン=テティエン=ド=ティネの村に着く。そこからボネット峠(Col de Bonette)へ行く狭い田舎道に入り、さらに8キロ走ったところに今回のハイキングの出発点である駐車場(標高1533m)に着く。国立公園の看板が立っているので見つけやすいと思う。ティネ川の畔に設けられた10台ほどの小さな駐車場である。
駐車場から最初はなだらかな林道を登り始める。林道は道路の反対側にある。林道を100mほど登った所にもうひとつの駐車場があり、もし下の駐車場が一杯の時はここに駐車すればよい。
ハイキングルート
登りは長く、ややきつい。ヴァンス山小屋(Refuge de Vens)は標高2380mのところにあり、この850mの標高差を一気に登る。下りが殆ど無い。後で、オティエ湖のハイキングによく似ていると思った。途中、何度か川を渡ったり、滝を眺めたりするのだが、結局、同じ狭い谷を垂直に登ってゆくだけなので景色の変化が乏しい。この点、オティエ湖のルートは歩いていて楽しい。
最初の湖-残雪が見える
2時間程費やして最初の湖に到着する。ここからは殆ど平坦なので歩きやすい。我々はさらにヴァンス湖の中で最大の湖(最初の写真)まで行き、その湖畔で昼食をとった。
この湖の上に山小屋が立っている。山小屋を挟むように二つの滝が落ちていて、遠くからの眺めはなかなかきれいである。滝を除けばニース山小屋の雰囲気だ。友人達を湖畔に残して、私が訪れた時には10人ほどのイタリア人のハイカーのグループで賑わっていた。
二時間近く湖畔で休んだ後、同じルートを引き返して駐車場まで戻った。
典型的なメルカントゥールの景色だった。湖、青々とした草、モルモットの泣き声、川、滝、岩山と全部そろっている。ただ、何か物足らなさを感じた。後で妻と話し合ったのだが、多分、湖に着くまでの景色が少し単調だったせいかも知れない。なんと贅沢な不満ではないだろうか。アクセスがやや難しいのでそれほど多くのハイカーとは出くわさなかった。みんな、公園の他の名所にいってしまったのだろうか。
滝に挟まれたヴァンス山小屋とその周辺-パノラマ合成写真
後日談
家内があるハイキング愛好家と話をしたところ、彼にはヴァンス湖からの帰り道がかなり退屈だったそうだ。今から思い返してみると、湖自体も格別美しかったとも思われない。平均的な美しさとでも言えようか。もっとドラマチックで綺麗な場所は他にもあるので、ここはさほど強くはお勧めしない。

2014年5月3日土曜日

サンタニエス(Sainte-Agnès)から熊山(Mont Ours)へ

サンタニエス村
ニース近郊には絵になるフォトジェニックな「美村」が三つある。エズ(Eze)、ペイヨン(Peillon)とサンタニエス(Sainte-Agnès)である。良い光りに恵まれれば誰でも傑作が撮れると思えるほどである。
サンタニエス村(Sainte-Agnès)はモントン(Menton)から数キロ山に入った所にある。村自体はそれほど面白くはないのだが、村の背後の小高い丘からのモントン市街そして地中海の眺めが素晴らしい。
サンタニエス村周辺にはハイキングトレイルが縦横に走っていて、休日にはハイカーが多く訪れる。今回は村の近くの熊山(Mont Ours)と呼ばれる標高1239m の山に登ってみた。地図を御覧頂けると分かるように、サンタニエス村から少し山に入った峠(Col des Banquettes)の駐車場から熊山に登り、帰りは別の山(Pointe Siricocca)を迂回して戻るルートである。休憩時間を含めて、全行程の所要時間は5時間弱だった。
熊山までは標高差の500m を一気に登るが傾斜がなだらかのでそれほどきつくはない。高度を上げるにしたがい地中海が次第に大きく視界に入ってくる。このような山と海の景色はこの地方独特のものである。熊山の頂上には古い城壁に囲まれた測候所の建物がある。(城自体は残っていない。)視界は360度開けていて、北側にはまだ雪に覆われた南アルプスの山々がよく見えた。サルビヤの一種だろうか、紫色の花がびっしりと咲いていた。
高度を上げると地中海が見えてくる。
熊山からは下り道になる。途中、Pic de Garuche と呼ばれる小山に立ち寄って、第二次世界大戦時代に建てられた要塞を見た。サンタニエス村は映画でも有名なマジノ戦線の南端に位置していて、イタリア軍の攻撃からモントンを守るために建設された巨大な要塞がまだ残っている。村の周辺の山にも小型の要塞があちこちに見られる。
Pointe Siricocca の全景
Col de Verroux が左下に見える
要塞からさらに下ると峠(Col de Verroux)に着く。この日はオリエンテーリングが行われていて、峠にはテーブルが設けられており、次々にやって来るハイカー達が差し出す紙に初老の男性がスタンプを押していた。私たちは峠から下って Pointe Siricocca の裏側を回って駐車場まで歩いたのだが、オプションとしてこの山に登るのも面白いだろう。Pointe Siricocca は海側が切り立った崖なので頂上からの眺めは圧巻である。駐車場までの帰り道はかなり長く感じられた。景色は標高が低いためかそれほどでもなかった。
中央やや上、山の斜面にあるのがサンタニエス村
サンタニエス村へはぺーユ(Peille)経由で車で行くのが景色もきれいでお勧めである。ニースからだと40分程かかる。モントン経由だと短時間で着くが殺風景だ。
サンタニエス村の隣にはゴルビオ(Gorbio)と呼ばれる別の村があり、この二つの村を巡る周回ルートは景色が素晴らしく非常に人気がある。初めてこの地方に足を入れる方には是非お勧めしたい。




2014年1月2日木曜日

サント・ヴィクトワール山

サント・ヴィクトワール山
去年(2013年)の大晦日にセザンヌの絵画でよく知られたサント・ヴィクトワール(Sainte Victoire)山に登ってきた。登山口は数多くあるのだが、今回はビモンダム(Barrage du Bimont)から「小修道院」(Le Prieuré)と呼ばれる山小屋まで登った。ニースからだとエクサンプロヴァンス経由で2時間弱でビモンダムに着く。
サント・ヴィクトワール山は馬の背のように長く伸びる、全長18キロの岩山で、最高点が1011mと高くはない。2000m級の南アルプスの山に登り慣れている私には少し物足りない。登りはなだらかで、2時間ほどかけて600m上がると山小屋に着く。マーカー(青の横線)が見つけづらい場所が何ヶ所かあったが、濃霧の中を歩くのでないかぎり迷うことはまずないだろう。よく知られた山なので大晦日にもかかわらず多くのハイカーに出くわした。春・夏の観光シーズンには人で溢れかえるに違いない。