2009年6月23日火曜日

グレオリエール=シピエール周回ルート

ハイキングルート
グレオリエール (Gréolières、標高830メートル) とシピエール (Cipières、標高750メートル) はニースの北西約50キロに位置する小さい山村で、樫の木の森に埋もれた、なだらかな谷を挟んで対峙している。谷底を流れるルー川 (le Loup) は、ここから数キロ下流でルー渓谷に達する。周回ルートはこの谷 (標高差約500メートル) を上り下りする、所要時間3時間半の短いものである。この日は曇りがちの天気で、夏のハイクキングには最適だった。
私たちは車をグレオリエール村の東端の駐車場に止めた後、偶然にも近くに立っていた道標に従い、狭い村道を下って行った。谷の向こうに目的地のシピエール村がよく見えた。広い農耕地 (パラグライダーの着地点にもなっている) 、古い石造りの教会跡(現在、修復中らしい)の脇を通り過ぎると次第に樫の森の中に入って行った。所々で視界が開けるものの、それ以外は殆ど緑のトンネルの中を歩いた。森は水気をたっぷり含んだ土で敷きつめられていて、どこか日本の丹沢を思わせた。最近は石のごろごろとした山道ばかり歩いていたので、プロヴァンスこんな場所もあったのかと少し驚いた。途中、道ばたの花に群がる数種類の異なる蝶を何度も見かけた。ここは昆虫が多く生息しているようだった。一時間ほどで私たちはルー川に着いた。
この辺りのルー川は幅5メートルほどの小さい川で、水量も多くない。現在の穏やかな姿から、この広大な谷間を形成した太古の激流を想像するのは不可能に近い。川の水は澄んで冷たく、アメンボウやトンボなどが数多く見かけられたが、不思議と魚の影は皆無だった。川縁で私たちは昼食をとり、しばらく休憩した後、シピエール村を目指して再び出発した。
反対側の斜面を上るに連れて、次第に谷の全貌が見えてきた。グレオリエール側の斜面は特になだらかに傾斜しており、その上をほぼ垂直に1400メートル級の褐色の岩山がそびえて立っている。森はまるで熱帯雨林のようにびっしりと広がり、谷はさらに西へさらに奥へと見渡す限り延々と続いている。このスケールの大きさは圧倒的だった。私たちはしばしば足を止めて景観に見入った。
やがて私たちはシピエールに着いたが、特に美しいとも言えない平凡な村だった。若者たちが所在なげにたむろしているのが目についた。強いて言えば、遠くからもはっきりと見えていた4、5階建ての何かの工場のような四角い建物が私有の城であることが分かったことくらいだろうか。私たちは早々に帰路についた。
帰りのルートは行きのルートより川のやや上流側にあり、より急で長く感じられた。車道の近くを通るために民家がそこここに見られるようになり、自然の中を歩く感じがやや薄れた。ルー川には立派な石橋が架かっていた。昔、よく旅行雑誌などで見たことのある形の橋なので妙に感動したりした。この石橋と平行して自動車用の鉄骨の橋も架かっていた。橋の近くに車が数台駐車されていて、川岸でピクニックをしている家族がいた。
グレオリエール側からの眺めは概して面白みがなかった。私たちは道ばたの花を観察したり、鳥のさえずりに耳を傾けながら、ひたすら斜面を登った。軽い脱水症にかかっていたようでやや疲れた。グレオリエールに戻ると、カフェで一休みした後、村内を見物した。シピエール同様、特徴のない平凡な村だった。ここでも村の若者たちが退屈そうにたむろしている姿を見た。
短時間で回れる、易しいルートだった。眺めはシピエール側が格段によかった。機会があれば、この谷に沿って上流のエスクラニョール (Escragnolles) 近辺まで歩いてみたい。

2009年6月11日木曜日

絵葉書写真

今年の冬は雨が多く、3月初旬まで日本の梅雨期のように肌寒く、鬱陶しい日々が続いた。3月、4月にはそれが持ち直し、5月に入ると俄然、初夏の陽気に変わった。今は、毎日のように晴天で日中は30度をこえる。重いカメラバッグを下げて歩き回るには暑すぎる。それに加え、前にも書いたように、ここは日差しが非常に強い。景観に恵まれたコートダジュールだが、太陽光をさんさんと浴びた真昼の風景写真は絵葉書のように平面的で陳腐なものになりがちだ。朝日の柔らかい光りが斜めから差す、立体感のある写真を撮りたいといつも思うのだが、なかなか時間が許さない。機会があれば、観光客で溢れる海岸沿いを離れ、山奥の小さな村で数日間寝泊まりしながら、写真撮影を楽しんでみたい。

2009年6月9日火曜日

ニース近郊の絶景地

エズ村
ニースはこぶし大の石で覆われた海岸とそれに沿って空港まで数キロ続く遊歩道、そしてイタリアを思わせる旧市街(ヴューニース、Vieux Nice、Old Nice ) をのぞけばたいして見るものがない。自然景観の美しさで言えば、隣接するヴィルフランシュ(Villefranche)、さらにその東のエズ(Eze)、そしてニースから車で1時間ほど内陸に入った所にあるルー渓谷(Gorges du Loup) などが特筆に値する。ヴィルフランシュ、エズへはそれぞれ電車、バスで行けるので、日帰りの撮影旅行にちょうどよい。(写真は岩山の上に立つエズの古城。現在は有料の植物園になっている。この山頂からの海の眺めはまさに絶景である。)

2009年6月1日月曜日

プロヴァンスのハイキング

ニースが属するアルプ=マリティーム県は東はイタリア、西はカンヌまで地中海沿いに延び、北は3000メートル級の高山地帯まで広がる。ハイキングトレイル、道標等は県が管理している。県が無料発行している公式ガイドは200近くのハイキングルートを掲載しているが、我々がよく出かけるのは県庁所在地でもあるニースからさほど遠くない海岸沿いの山や中部山岳地域である。
日本もそうだが、この時期になると野山は木々や下草が青々と茂り、野生の花(エニシダ、シストローズ、タイム、カノコソウなど)に満ち溢れて非常に美しい。ただ、場所にもよるが、日本の鬱蒼と茂った土山というより、灌木が点々とする乾燥した岩山の感じだ。