2009年8月29日土曜日

ヴェルドン渓谷:釣り人の道

先日、ヴァール県とアルプ=ド=オート=プロヴァンス県の県境に位置するヴェルドン渓谷(Gorges du Verdon) に行ってきた。ヴェルドン渓谷のハイクはこれが二度目で、前回はマルテル道(Sentier Martel) を歩いたので、今回は釣り人の道(Sentier du Pêcheur) を試してみることにした。このルート(地図の黄色の道)は県道脇の駐車場から始まり、渓谷の右岸を周回する、所要時間約3時間の短いもので、標高差は200メートル程度ある。初級者向けの難易度の低いトレイルなので、この日は家族連れのハイカーをよく見かけた。私たちは周回ルートを時計回りに歩いた。
駐車場からは川岸を目指してひたすら坂を下る。本道を示す黄色のマーカーはやや見つけづらい。しばらく行くと松や樫の木の森に入る。時折、木立の間から谷底のヴェルドン川を望みながら進む。1時間ほどで広大な河川敷に到着した。ここは休憩にちょうどよく、水浴びにも適している。しかし、この場所はサント=クロワ湖から貸しボートに乗って上ってくる観光客の溜り場にもなっているようで、私たちが休憩を終えて再び歩き始めた頃にはかなり騒がしくなっていた。ヴェルドン渓谷はフランス国内外によく知られた観光名所なので観光客やハイカーが多い。日本でもそうだが、混雑や喧噪を避けるためにも早朝に出発することが望ましい。
河川敷を後にして、私たちは川に沿ってしばらく歩いた。数カ所で岩場を乗り越えなければならないが、概して平坦な道が続いた。日本でよく見るツゲの木が多く茂っていた。やや上り坂になり、さらに奥に進むとサン=モラン滝に到着した。この近辺はガイドブックには載っていないトレイルが多く錯綜していて迷いやすい。滝は落差が4メートル位で小規模だが、鬱蒼と茂った木々と巨岩に囲まれて野性的な感じがした。ここで昼食でも食べてゆっくりしたいところなのだが、他のハイカーが頻繁に立ち寄るので、しばらく休んだ後でまた斜面を登り始めた。
渓谷をさらに半分ほど上がると、草野球ができそうなくらいに広く、平らな野原にでた。つい最近、ここの森を切り開いてできたらしく、松の木の丸太がそこそこに積み上げられていた。私たちは野原の隅のプラタナスの大木の下で昼食をとった。プラタナスの脇にはサン=モラン滝に流れ込む沢が直径7、8メートルの池をつくっていた。水草に覆われた池の水は非常に冷たく、きれいに透き通っていた。休憩を頻繁にとったので、駐車場を出てからすでに3時間余り経過していた。
野原からは県道の下を駐車場まで歩いた。距離的には全行程の1/4にあたり、途中、眺望のよい地点でとった小休憩を除けば40分程度で着いた。出発時にはガラガラだった駐車場も100台近くの車で溢れていた。約6時間の行程のマルテル道の半分しかないものの、川あり、森あり、滝あり、野原ありと盛り沢山の楽しいハイクだった。体力的、時間的に余裕のない方には是非お進めしたいルートだ。

2009年8月12日水曜日

真夏の夜のコンサート

昨夜はニースに隣接する、サン・アンドレ・ラ・ロシュ(Saint André de La Roche、人口5000人)という小さな町で開かれたコンサートに行ってきた。妻の友人が演奏するということもあったので出かけた。本来ならば、今頃は妻の好きなギリシャで夏休みを過ごしているはずなのだが、今年は私がまだ失業中で金銭的に余り余裕がないのでニースに残り、二人で毎日、コートダジュールの“観光旅行”をして楽しんでいる。
コンサートは町役場の敷地に作られた仮設ステージで催された。演奏前には町長と県議会議員の挨拶があり、日本の田舎町でよく見かける光景と似通っていて興味深かった。感心するのは、このコンサートは県が全経費を負担し、町民、県民に無料で開放されていることだ。このような催しは県内の過疎地の村や町でも行われて、県民に小さな娯楽を提供している。
昨夜は4人編成のバンド(ピアノ、バス、ドラム、アコーデオン)が演奏し、やや年配の男女の歌手がよく知られたシャンソンを歌った。歌手はこれらの曲を歌い慣れていて、派手な手振りをまじえたり、こぶしをきかせたりして100人足らずの観客を楽しませた。どこか日本の歌謡演奏会と似ていて面白いと思った。照明、音声などは手作りで、演奏、歌声自体もそれほど上質ではないのだが、40、50ユーロ払って見に行く商業ベースのコンサートとは性格が違うので、それはそれで十分楽しめた夜だった。フランス人はこのように、余り金をかけずに楽しく時間を過ごす術にたけている。