2013年7月27日土曜日

オティエ湖(Lac Autier)-メルカントゥール国立公園

残雪を映すオティエ湖
このところ、ニースは連日30度を超える暑さが続いている。この暑さのため、つい先日、市内に光化学スモッグ警報が出された。公共交通網が日本ほど発達していないので、フランス人は車を多用する。毎年、夏になると市街地では空気汚染が深刻になる。

ニースからベルヴェデール
今回はメルカントゥール国立公園内にあるオティエ湖(lac Autier)についてちょっと書いてみる。湖はニースから車で1時間半のベルヴェデール(Belvédère)という村の外れにある。村を抜けて狭い舗装道路をゴルドラスク谷(Vallon de la Gordolasque)に沿って10キロほど行くと駐車場があり、そこから歩く。原始人の壁画で非常によく知らた「驚異の谷」(Vallée des Merveilles)も近いので、我々が着いた時(朝の九時過ぎ)は、駐車場はすでに100台ほどの車で満杯だった。ハイカーの混雑でこの先が思いやられると危惧したが、大半は別ルートを選んだようで、我々は比較的静かな一日を過ごすことが出来た。

ハイキングルート
駐車場からクント木橋を渡りゴルドラスク川に沿って20分程歩くと、分岐点に着く。そのまま谷を直進するとニース山小屋に、谷を横切り斜面を上るとオティエ湖に行く。ここから湖まで600m弱の上りである。道は岩がゴロゴロしていてやや歩きにくく、初心者には多少きついかも知れないが、景色はよい。この辺りは水が豊富で、あちこちに川が流れており、大小様々な滝も見られる。野生の鹿やモルモットを期待していたのだが、この日は一匹も見ることが出来なかった。駐車場から2時間弱でオティエ湖に到着。

オティエ湖は最大深度8mあるようだが、水は冷たく、よく澄んでいた。蛙ではなく、小ぶりのマスが泳いでいるのが見えた。残雪と雲の白が湖面によく映え、非常に美しい。周りの切り立った山々も美しい。去年行ったプラル湖の周辺と似たような地形である。実際、プラル湖は山ひとつ隔てた別の谷に位置している。地学的には双方とも氷河が侵食した窪地に形成された湖であるので似ていても不思議ではない。

暑さにうだるニースを出発してから4時間弱でこの自然の中に立つことができるとは、我々は幸せ者である。多分、オティエ湖は今まで行った高山の湖の中でも美観トップ5に入る。是非、お勧めしたい。
オティエ湖を目指してひたすら登る

2013年7月12日金曜日

夏山:ペルラ山(La Perla)

左端にそびえるのがペルラ山

夏のニースは住みづらい。外は30度を超える暑さ、その上どこも観光客で込み合っているのでアパートを出る気がしない。時折、友人との会食や映画やコンサートに出かけるのをのぞけば一日の大半は家の中で過ごしている。あまり金の無い地元の人間もだいたいこんな感じで夏を過ごしているのではないだろうか。このうんざりする暑さと人混みから逃れるために、時々車を2時間程とばして県の北端の高山地帯に行く。アルプスのひんやりした空気に包まれ、自然の静寂の中を歩くと実にほっとする。
トンド峠(Col de Tende)は私達のお気に入りの避暑地のひとつである。ニースからだと、イタリアのヴァンティミ-ユ(Vintimille、Ventimiglia)経由でリモン(Limone Piemonte)まで走るのが一番の近道だ。トンド峠はフランス(南側)とイタリア(北側)の国境にあり、イタリア側にはリモン町が運営する広大なスキー場がある。この峠の国境・稜線に沿って東西にハイキングトレイルが伸びている。標高差500m程のゆるやかな道である。去年、初めてここを歩いてすっかり気に入ってしまった。特に標高2177mのペルラ山(La Perla)周辺はこの時期には色とりどりの草花が咲き乱れていて、非常に美しい。
今回は悪天候の中を出発し、最初の2時間は濃霧で視界が殆どゼロだったが、ペルラ山に着いた頃には幸運にも青空が見られるまでに回復した。ペルラ山の麓には浅い盆地が広がっており、残雪 がそこここに見られた。8月に入る頃にはすべて消滅してしまっているだろう。赤い山ツツジの花が満開で、その間を鹿が2頭、駆け足で通り抜けて行くのが見えた。深緑の草に覆われた盆地はいつも私に不思議な印象を与える。どこか遠い南米の山々を思わせる。私たちは盆地の湖の畔で昼食をとり、1時間ほど何もせずに辺りの風景を堪能していた。

2012年11月7日水曜日

プロヴァンスの紅葉

クルムの森から見るルー渓谷

昨日、紅葉狩りをしにクルム(Courmes)に行ってきた。だいぶ紅葉が進んでいたが、色が深まるのはもう少し先のようだった。この辺り一帯は森に覆われていて景色がよく、ニースからも近いので、春、夏、秋とシーズンを通して人が多く訪れるのだが、昨日は平日だったので村の駐車場はガラガラで、他のハイカーに出会うことは結局、一度もなかった。ここに来ていつも残念に思うのは淡い黄色に変色する木が多いので、写真が鮮やかに映えてくれないことだ。錦絵のような感じの写真を撮りたいのだが、なかなかうまく行かない。(高画質の写真はFlickrでどうぞ。)

2012年11月2日金曜日

朝の散歩:ニースの光りと音

昨日は諸聖人の日(Toussaint)で休日だった。私たちは朝、Colline du Château まで散歩した。前日の夜にニースを通り過ぎた嵐の影響がまだ残っていて海はかなり荒れていた。

            

2012年10月22日月曜日

ルー渓谷


先週の日曜日に友人を連れてルー渓谷に行ってきた。紅葉はまだまだ先のようだった。

2012年9月26日水曜日

カヨル峠 - メルカントゥール国立公園

カヨル峠(Col de la Cayolle)はアルプ=マリティム県(Département des Alpes-Maritimes)とアルプ=ドゥ=オート=プロヴァンス県(Département des Alpes-de-Haute-Provence)にまたがる、標高2,326mの峠である。ちなみに、カヨルとは山小屋の意味である。ニースからは車で2時間弱とやや遠いが、私たち夫婦のお気に入りのハイキングコースのひとつなのでここに紹介したい。左の地図をご覧頂ければわかるように、カヨル峠の駐車場を出発する周回ルートで、標高差500m、所要時間3時間弱という比較的易しい行程だ。ここはメルカントゥール国立公園に属している。 コースの前半はロソン峠までの4km程のなだらかな登りである。コンスタントな登りなので膝にはよいのだが、トレイルの周辺には木がまったく生えてないので日陰が無く、カンカン照りの夏場のハイキングはかなりきついのではないかと思われる。気温の低い秋か春の早朝に登り始めるのが懸命だろう。ロソン峠の手前で広い盆地の斜面を歩く。水の干上がったロソン湖が眼下に見えた。岩だらけの殺伐とした風景である。

ロソン湖を望む

      ロソン峠の周辺は台地のように平坦である。道標から少し歩いて崖の縁に立つと、下にアロス湖(Lac d'Allos)が見えた。アロス湖はヨーロッパで一番高い最大の自然湖だそうだが、この複雑な定義は忘れてその美しさにしばらく見入った。湖の周りの山々も美しい。アロス湖からはこの近辺で一番高いペラ山(Mont Pelat - 3051m)へ登るトレイルがのびている。小カヨル峠からもペラ山に行くことが出来るのだが、アロス湖に車を止めて登ったほうがより効率的だ。

アロス湖

      近くの雪崩山(Montagne de l'Avalanche)と呼ばれる山の頂上(2729m)まで登ってみたが、景色はそれほどでもなかった。ロソン峠の道標まで戻り、小カヨル峠を目指して歩き始める。この辺りは歩くのが楽しい。どこか、公園の広場を散歩している気分がする。30分程でガレ湖(Lac des Garrets)に着く。ペラ山がよく見える。ここで昼食をとった。次第に雲が出てきた。この時期の山は午後は天気が悪い。他のハイカーが続々到着し、やや騒がしくなったので早々に出発する。

ガレ湖とペラ山


小カヨル湖
小カヨル峠の手前で野生のモルモットを見つける。前回も同じ場所で見かけたことがある。多分、同じ家族だろう。皆、一様に丸々と太っている。峠の下には小カヨル湖がある。この辺りは水が豊富にあるので彼らは生き延びてゆけるのだろう。小カヨル峠に到着。 しばらく休憩した後、駐車場目指して峠を下る。ここからは見慣れた景色が広がる。なだらかに隆起する丘が幾重にも交錯する、牧歌的とも形容できるような風景である。今回は放牧された羊の姿は見えない。どこか別の草地に移ったのに違いない。小カヨル峠から駐車場まではいつも長く感じられる。疲労感からそう感じられるのだろうが、歩いても歩いても駐車場になかなか着かない。 このルートの魅力はその手軽さにある。すでに出発地点が高いので、3000mに届くような高山からの絶景が1時間ほど歩けば見ることができる。トレイルも比較的なだらかなので子供も連れて行ける。実際、駐車場から直接小カヨル峠まで行って戻る2時間余りのコースが最も人気があるようだ。ただ、どこでもそうだが山の天気は変わりやすいので細心の注意が必要だ。あと1ヶ月ほどでこの辺りは雪が舞い始めるだろう。その時はこの自動車道も閉鎖されるようだ。

2012年8月12日日曜日

メルカントゥール国立公園(2)

ハイキングルート
メルカントゥール国立公園のハイキングの2日目はフネストル聖母教会の南に位置するプラル湖(Lacs de Prals)へ登る周回コースを歩いた。五つの小さい湖からなるプラル湖はよく知られており、シーズン中はハイカーが多く訪れる。県発行のガイドは御覧のように反時計回りになっているだが、山小屋の従業員の勧めで時計回りに歩くことにした。結局、この方が最後の下りがきつくなく、また景色の変化もより楽しめたと思う。全行程4時間、標高差530mの体にやさしいハイキングである。
山小屋から牛小屋(ここで地元産のチーズを買えるようなのだが、我々の滞在中は運悪く閉まっていた)の脇を通り、カラマツの茂る谷を登る。最初は急斜面をひたすら登るだけで面白くないのだが、標高が増すにつれて次第に視界が開けてくる。草花に覆われ、小川が流れる牧場のような平地を横切る。この辺りから登りは緩やかになる。左右にそびえる3,000mにとどく山々を眺めながら時間をかけてゆっくり登って行く。
2時間足らず歩いた後、道標が立つ峠に着いた。眼下に目的のプラル湖が見える。湖は三方を山に囲まれた草地に横たわっている。アイベックスの集団が駆け足でハイキングトレイルを横切って行くのが見える。水でも飲みに来たのだろうか?ハイカー達を遠回しにしながら山の向こうに消えて行った。峠から湖まで下る。下ると言っても、標高2,339mもある。湖には水草がびっしりと生えていた。水は冷たく、やや濁っている。蛙が人影に驚いて飛び跳ねる。我々はここで昼食をとった。
プラル湖全景
朝は快晴だったが、昨日と同様に次第に雲が出てきた。雲は風に吹かれて空をどんどん流れて行く。地表を雲影が這って行く。美しい場所なのでハイカーが途切れなくやって来る。子供連れの家族、老人のグループもいる。しかし、絶対数は少ないので、誰もが思うがままにこの自然を楽しむことができる。
プラル湖を出ると長い下り道になる。眼下に広がる広大な草原に向かって山の斜面をゆっくりと下って行く。トレイルの脇を小川が流れている。この辺りに生息しているモルモットが鋭い警戒音を発する。母親なのか、岩に上がってこちらをじっと見ている。モルモットは高山では比較的よく見かける。中には人馴れしていて、近寄っても逃げないのがいる。やがて草原の端の三叉路に着く。左にのびる道はどうやら山の尾根を巡るトレイルらしい。我々は右手に折れ、放牧されている牛を驚かせないように注意しながら草原を横切って行く。草原を抜けると谷を下る。谷川が勢いよく流れている。水量が豊富である。谷の斜面は草花で覆われ、蝶が無数に舞っている。撫子もあちこちに咲いている。蛍もいるかも知れない。途中、20人ほどの中学生のグループに出くわす。ニースからやって来たという。谷を下り終えると車道に出る。最後はこの車道を登って山小屋に戻った。
登り下りがきつくない、初心者も十分に楽しめるコースだが、ハイキングシューズは必須だと思う。とにかく景色が素晴らしい。天気が良ければ申し分ない。次回は周辺の山に登ってみたい。