ハイキングルート |
私たちは車をグレオリエール村の東端の駐車場に止めた後、偶然にも近くに立っていた道標に従い、狭い村道を下って行った。谷の向こうに目的地のシピエール村がよく見えた。広い農耕地 (パラグライダーの着地点にもなっている) 、古い石造りの教会跡(現在、修復中らしい)の脇を通り過ぎると次第に樫の森の中に入って行った。所々で視界が開けるものの、それ以外は殆ど緑のトンネルの中を歩いた。森は水気をたっぷり含んだ土で敷きつめられていて、どこか日本の丹沢を思わせた。最近は石のごろごろとした山道ばかり歩いていたので、プロヴァンスこんな場所もあったのかと少し驚いた。途中、道ばたの花に群がる数種類の異なる蝶を何度も見かけた。ここは昆虫が多く生息しているようだった。一時間ほどで私たちはルー川に着いた。
反対側の斜面を上るに連れて、次第に谷の全貌が見えてきた。グレオリエール側の斜面は特になだらかに傾斜しており、その上をほぼ垂直に1400メートル級の褐色の岩山がそびえて立っている。森はまるで熱帯雨林のようにびっしりと広がり、谷はさらに西へさらに奥へと見渡す限り延々と続いている。このスケールの大きさは圧倒的だった。私たちはしばしば足を止めて景観に見入った。
やがて私たちはシピエールに着いたが、特に美しいとも言えない平凡な村だった。若者たちが所在なげにたむろしているのが目についた。強いて言えば、遠くからもはっきりと見えていた4、5階建ての何かの工場のような四角い建物が私有の城であることが分かったことくらいだろうか。私たちは早々に帰路についた。
帰りのルートは行きのルートより川のやや上流側にあり、より急で長く感じられた。車道の近くを通るために民家がそこここに見られるようになり、自然の中を歩く感じがやや薄れた。ルー川には立派な石橋が架かっていた。昔、よく旅行雑誌などで見たことのある形の橋なので妙に感動したりした。この石橋と平行して自動車用の鉄骨の橋も架かっていた。橋の近くに車が数台駐車されていて、川岸でピクニックをしている家族がいた。
グレオリエール側からの眺めは概して面白みがなかった。私たちは道ばたの花を観察したり、鳥のさえずりに耳を傾けながら、ひたすら斜面を登った。軽い脱水症にかかっていたようでやや疲れた。グレオリエールに戻ると、カフェで一休みした後、村内を見物した。シピエール同様、特徴のない平凡な村だった。ここでも村の若者たちが退屈そうにたむろしている姿を見た。
短時間で回れる、易しいルートだった。眺めはシピエール側が格段によかった。機会があれば、この谷に沿って上流のエスクラニョール (Escragnolles) 近辺まで歩いてみたい。
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